(1)博物館便り
先週小さなイベントに協力した。シマノ広報室が社員に参加を呼びかけたサイクリングだ。シマノは自転車部品と釣り具のメーカーだが、社員全員が自転車や釣りを趣味にしているわけではない。せっかくシマノで働くことになったので、その方々にも自転車や釣りの楽しさを体験してもらうことで、自分の仕事の意味、喜びを提供する企業で働いている事を知れば仕事への意欲も高まると思う。
今回は10名程の女性が参加してくれた。私は道案内人として古墳と環濠、灯台などを回った。幸いに暑くも、雨もなく、快適に2時間半をかけて約20km程走った。
普段はいわゆるママチャリに乗る事はあっても、スポーツバイクに乗っている人は少なく、楽しく走れたわりには20kmも走っている事に驚いているようだった。
このコースは私自身も20回以上走っていて、自信を持ってお勧め出来るコースだ。このコースについては、山と渓谷社刊「大阪・神戸周辺自転車散歩」の中の「古墳・環濠を結ぶ堺歴史めぐり」に紹介されているので参考にしてほしい。この本には私の大好きな天野街道を紹介した「泉北ニュータウン・グリーンウェイと天野街道」も紹介されている。
自転車に乗る事を楽しむには、3つの条件があると私は考えている。1つは使用目的。コースに適した自転車を使う。2つ目は車が来ない、少ないコースを走ること。3つ目はリッチな気分が味わえる良い自転車に乗ることだ。
今回は自転車散歩、それも観光目的だったので、堺市が行っている観光レンタサイクルと当館の保有している8段や27段の自動変速機などに乗ってもらった。普段と異なる自転車に乗ることは、使い勝手がわからず余裕がなくなることもあるが、高性能な自動変速車は今回の使用目的に合っていた。そんな事が自転車ファンを増やすポイントの1つであることが確認できた。
(2)通勤サイクリング便り
私の自転車人生の中では多くの自転車に乗って来た。先週の赤い自転車5種の他にチネリ・スーパーコルサ、デ・ローザ、ビアンキ、レバン、シマザキ、ブリヂストン・アンカー、GT、ルイガノ、ズノウなど多くのロードやマウンテンバイク、ツーリングに乗ってきた。どれが一番良いとは言えない。全日本のレベルで戦っていた時は僕の脚力をしっかり受け止めてくれる、堅いフレームを求めてチネリを買った。脚力が衰えてくると、路面のショックを吸収してくれ、乗り心地の良い軽いカーボン製のレーサーが欲しくなる。
私たちは自転車を選んで買っているつもりだが、本当は自転車に私たちの乗車技術や脚力、持久力を試されているとも言える。そう考えると今の自分に合った自転車を買うのか、近い未来にこんな自分になりたいという願望を見据えて購入するのかという選択肢もあるのではないか?
本物のロードレーサーを買って、レースに出て入賞したいという願望があるなら、ショック吸収力は劣るが、剛性の高いレーサーを選ぶ事もあるだろう。長距離を走るなら、快適性重視になると思う。
どの自転車が一番良いかは、一人一人が自分の乗車目的、乗車技術、脚力などを十分に考えて、自分が判断するしかない。自転車を買うという事を言い換えれば、自分の夢を買うということなのである。
私の場合は、誠に困った夢がある。
本物のレーサーに乗れるのはたぶんあと10〜15年位しかないという時間的制約の中で、もっといろいろな自転車に乗ってみたいという夢だ。博物館には5〜6台もあるが、実はまだ「コルナゴ」には乗ったことがない。「コルナゴ フォーエバー」(八重洲出版)という本が出て、私の専門である自転車の歴史、特に憧れのイタリアンレーサーの歴史に輝く実績を残しているブランドの魅力を発見してしまった。還暦記念レーサーはオーダー済なので、さて家族の同意、予算をどうしたものかと考えている。(中村博司)
