(1)博物館便り
2008年が終ろうとしている。あなたにとって今年はどういう年でしたか?
私の周りの人は「年をとると、一年が早い」と言う人が多いようだ。確かにその通りだと思うが、皮肉っぽく言えば「感動する事が少なく、心に残る事が少なかった裏返しでもある」ように思う。それはとても幸せなことでもある。本当に大きな試練、壁にぶつかって苦難の連続の一年であれば、あっという間に終ったとは言えないだろう。最近のニュースは正にその事を伝えている。
私は年初めに5つの目標を立てた。その5つの目標の反省も含めた私の10大ニュースを紹介したい。
目標の@は、当館の350台程の完成車と数千点に上る資料を整理し、資料データを蓄積することだった。着手はしたが、まだ資料の整理が進んだ状態とは言えない。データ整理のソフトを持つ会社とシステムを構築中である。来年ははっきりした成果として示せるよう努力したいし、私の最重要課題の1つでもある。
Aは新しいイベントを立ち上げ、応募・参加数は500を達成するというものだった。これは昨年まで3年間実施してきた経産省の「キャリア教育プロジェクト」を博物館のイベントとして実施したのである。夏から秋にかけて実施し、参加児童数は合計で487人となり、ほぼ計画を達成できた。しかし実施するため堺市立小学校の校長会で2回のプレゼンテーション、応募要項の決定、2つの小学校に出向いてのプレゼンテーション等、そして審査・表彰式の実施など多くの労力を必要とするイベントだった。改善すべき課題も多い。
Bは堺のまちづくりでは、何らかの実績を残すよう努力するというものだった。市民の会の活動において 1.自転車デーの実施 2.自転車地図改訂に向けて毎月のモデルコースの試走を重ねてきた。こうした地道な活動が堺市を動かしたとは言い切れないが、4月には「自転車道整備推進室」という部署が建設局道路部に新設され、5人の職員が配置された。国交省と警察庁が合同で募集した自転車道モデル地区に堺市が指定されたのである。また堺市は環境モデル都市にも立候補し、一次選考は外れたが、追加の指定を受けるため多くの施策案の中に自転車を活用した「クールシティー堺」を目指している。その活用に12月14日の毎週日記にも書いた、レンタサイクルシステムの導入も検討されているのである。まだまちづくりでの目に見える形での成果はないが、その成果が見えるのは時間の問題だと言えるところまで来ている。
Cは3冊目の本を出版できるよう原稿を書きためるものだった。これは思った以上に進んだ。6月には“自転車と健康”についての新刊を出版社と約束できた。11月には一応原稿を提出し、来春3月頃には出版される。今回も自転車運動と健康について研究している大学の先生との共著である。
Dは私の個人的な自転車レースにおいて、マスターズのレースに参加し、入賞することだった。今年は昨年の7位を上回る4位に入賞できた。ただ今年は高知市での開催で、東日本の選手はほとんど参加しておらず、来年の静岡県伊豆市のレースは厳しいものになるはずだ。ツール・ド・おきなわは著作の原稿執筆に追われてキャンセルした。
E自転車に対する社会的注目度が上ってきた。私が関わったのは、大丸心斎橋店のショウウィンドウの展示であるが、「BIKER COAT」というコンセプトで作られた各社の短めのコートと自転車が一流百貨店の顔であるショウウィンドウに美しくディスプレイされた。今までに無い新しい動きだと思う。
F自転車を活用したまちづくりに取組む町が急増している。今年になって自転車を活用したまちづくりに取組みたいといろいろな町や商工会議所などの方が視察に来られるようになった。特に熱心なのはJAPAN CUPを実施している宇都宮市だろう。レースイベントの実施だけでは地元市民の利益は多くないと思うし、地に足のついた自転車を活用したまちづくりが求められていると思う。
Gマスメディアを通しての情報発信の増加。当自転車博物館には自転車に関する問合わせや、電話取材は毎週必ずある。今までに無い所として「NIKKI4946」の「日経新聞の読み方」というコラムを8月に4回にわたり私を取材したコラムが出た。共同通信社の50回目連載のコラム「エンジョイ自転車ライフ」も昨秋のスタート時は1〜2紙の地方紙の連載だったが、徐々に増加し、今は5〜6紙で掲載されている。
H毎月のように講演を依頼される機会はあるが、今年はシマノ社内で自転車通勤者に対して交通事故にあわないための安全講習を行った。社内でやる講習の講師は初めてだった。中・高生の自転車ルールを守らない自転車通学利用にも絶対こうした講習は必要だと思っている。
I60歳還暦記念号。今年60歳を迎え、記念に「還暦レッド」のカーボンロードバイクをオーダーした。車体に60とHiroshi Nakamuraと入っている。もうすぐ発売の新型デュラエースを装備して、暖かくなる頃には乗れるでしょう。
以上、わたしの10大ニュースでした。(中村博司)
